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子豚のような好奇心と行動力、そして成長力を目指しています。こぶたの学校長・纐纈雄三
実践福祉2
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TQA®の豚の輸送
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TQA®の豚の行動
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研究報告:輸送時の出荷肉豚ロス
TQA®(輸送品質保証プログラム)とは
輸送品質保証プログラム(TQA: Transportation Quality Assurance®)ハンドブックは、米国ポーク生産者協議会(NPB)が作成したハンドブックで、福祉とポークの質の向上と農場の群健康を守るためのガイドラインで76ページ8章からなります。各章は1)豚の行動、2)豚の適切な扱い、3)施設と器具、4)豚を車に乗せること降ろすこと輸送すること、5)豚のフィットネス(身体の調子)、6)バイオオセキュリティ、7)緊急時への対応、8)米国の法律と農場査察です。日本の生産者の参考になる部分を輸送編(4から7章)と行動編(1から3章)に分けて紹介します。
TQAの豚の輸送編、豚を車に乗せることと降ろすこと
豚にとって車に乗せられ輸送され降ろされることはストレスが多いイベントであり、肉の質に影響する重要因子です。豚を扱う人と輸送する人は、安全で人道的なプロセスを意識すべきです。
1)豚を輸送車に乗せること
輸送密度
頭数過密での輸送は、安易にしてしまう大きな間違いです。福祉上の問題があり、さらに豚肉の質を下げ、死亡豚や歩行不能豚を増やします。過密輸送のサインは、豚同士が重なったり、豚の鳴き声が多くなったり、豚の呼吸が早くなります。
輸送車のゲートは、豚を車の奥に強引に押し込めなくても閉めれるようにすべきです。米国では豚のサイズと気温によって、死亡割合や歩行不能豚の発生割合が上がります。例えば気温が15°から30°に上がると、屠場到着時死亡割合が1%以上増えると報告されています。一方、気温が10°から0℃に下がると、歩行不能豚が1%増えると報告されています。そのため屠場到着時の死亡割合は6月から9月に増え、9月から2月は歩行不能豚が増えます。左に米国ガイドラインを示しました。
例えば暑い時期は以下を考慮:
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夜間や早朝の運送、急速に暑くなる時の初日や春先にも注意
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輸送車の横の換気孔を全開、輸送密度を減らす(例、体重135キロで5 m2)、ワラは敷かない
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水を豚にかけて蒸散作用を利用して、豚の身体の熱を取るのはよい方法です。例えば、気温が27℃超の場合だと、輸送中や輸送後に5-10分間水をかける。
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水をかけた後に蒸散の時間をとることが大切。つまり水をかけた後、乾く時間をとることが大切。連続の水かけは蒸散が間に合わず、ヒートストレスの原因になります
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大量の水を一度にかけると、湿度が上昇して危険です。ミストよりは、水滴の大きいほうがよい。またオーバーヒートしている豚に大量の水をかけるとショック死する場合があります
寒い時期は敷きワラやオガクズを使用することも有用です。
運転手や輸送担当者は、専門的な判断が大切です。
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2)豚を乗せる時と降ろす時のガイドライン
出荷肥育豚の場合
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初めに下の階から豚を入れる
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3-5頭の小さいグループで確実に静かに降ろす
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屠場やパッカーの手順と規則に従う
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他の運転手の邪魔をせず、豚の安全と人道的取り扱いに集中
離乳豚やナースリー豚の場合
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出荷台や傾斜ランプを移動させる時は、時間をかけ豚に外傷がないように
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過度な騒音、大声で叫んだりしない、トラックを叩いたりしない
種豚の場合
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注意深く豚のボディランゲージを読み、突然起こるかもしれない豚間の攻撃行動に巻き込まれることから逃げる心構えを持つ
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新しい豚舎に種豚を降ろすときは、豚に様子見や落ち着く時間を与える。豚を急がせない
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種雄豚をトラックに載せる時は、攻撃行動を避けるために1頭ずつ載せる
輸送のための豚のフィットネス(身体の調子:fitness)
ここでいうフィットネスとは、人が健康のためにする運動という意味でなく、輸送されるのに適した、豚の身体の調子という意味です。豚を輸送する人と扱う人は、豚の行動を注意深く観察し、以下の豚は輸送されるのに不適です。
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病気がある、外傷がある、虚弱である、過度に疲労している
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豚が自分の四肢で立てない
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眼が見えない
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動けない
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新生豚でまだ臍帯が修復していない
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妊娠豚で分娩まで12日以内(妊娠期間の10%)
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母豚で分娩後48時間以内
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ボディコンディションが貧弱で気候の変化に耐えられない
なお輸送中での死亡の理由は、ヒートストレス、心拍数増加、心臓不全、豚ストレス症候群(PSS)と過度疲労です。
過度疲労
過度疲労豚は、一時的に自分で歩けなくなったが、休息すれば回復できると期待できる豚です。過度疲労豚は一般的にいう代謝性アシドーシス(体液の酸過剰)を起こしており、肉の質が低下します。リスク因子は多数あり、遺伝、腸内容がいっぱい、輸送、気温・湿度、輸送密度、施設、人による豚の扱い、人そのもの、その豚のグループなどです。
豚のストレス
豚が人からのストレスや輸送ストレスを受けると、大きく口を開けて息をしたり、皮膚の色が変わったりします。ストレスの原因がなくならず、さらにストレスが加わると以下の行動を示すようになります。
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異常な叫び声
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身体が固まる
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筋肉の震え
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身体が動かなくなる
過度のストレスや筋肉が過度に緊張すると、心拍数の増加や直腸内体温の上昇もあります。もしストレスの原因が取り除かれないと倒れたり、歩行不能または死亡してしまうこともあり得ます。
ヒートストレス
豚の体温がある一定以上で、普通の浅速呼吸で体温が下げられないと、ヒートストレスが起こります。豚は深い喘ぎ声や息切れをおこします。以下の手当が必要で、手当てが遅れると死に至ります。
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移動させず休ませる
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優しく豚の身体に散水する。なお冷水を大量にかけると死ぬ恐れあり
豚ストレス症候群(PSS)
PSSは豚の遺伝的な障害です。PSS遺伝子を持った豚は、ストレスに過度に反応し、体温が急上昇、皮膚に赤班がでたり、豚が倒れたり、筋肉が固くなったりします。すぐにヒートストレス時と同様な手当が必要です。しかし、種豚の選抜育種の中で、この遺伝子を持った豚は米国の生産農場ではほとんどいなくなりました。
輸送ロス(死亡と歩行不能)
米国の屠場でよく起こる輸送ロスは3種です。それは1)輸送し屠場に到着時に死亡していた(DOA)、2)屠場に到着した後、豚の係留所で死亡(DIY)、3)パッカーで歩行不能で他の豚について動けない(歩行不能豚)です。米国屠場やパッカーでは豚が歩行不能と判定されると安楽死となります。総輸送ロス割合は米国全体で輸送された豚の0.7%と推定されています。内訳は屠場での死亡発見が0.25%で、歩行不能が0.44%です。ただし年と季節で大きくバラツキます。
豚の病気や外傷や歩行不能への対応
病気や外傷や歩行不能の豚は人道的に扱われるべきで、かつ農場での豚扱いと移動のガイドラインにも含むべきです。適切な栄養素を含む飼料の給与、群健康管理プログラムの実行、よい施設、よい扱い、さらに身体四肢構造のよい種豚の選抜育種を生産者は心がけるべきです。病気や外傷や歩行不能な豚が見つかれば、飼料や水の摂取での競争が少なく、観察もできる隔離ペンなどで休ませることです。なお見た目は健康に見えても、過去に健康問題や呼吸器問題をもったことのある豚は、取り扱いや移動のストレスに感受性が強い可能性があります。
病気や外傷や過度疲労の豚の移動
輸送されることは、豚にとってはストレスの多いイベントです。4時間の輸送で、体重5%が減少する豚もいます。トラックに乗せる時、自分で歩くことのできない豚は、輸送するべきでありません。回復の見込みが少ない場合は、安楽死させるべきです。米国では輸送する人は、病気や外傷や歩行不能な豚を見つけた場合には、監督者に報告する義務があります。
輸送してしまった場合、運転手は輸送車から降ろす時、豚を受け取る人に、降ろす前に病気や外傷や歩行不能な豚がいる時は、知らせる必要があります。輸送された病気や外傷や歩行不能な豚は、到着時には他の豚と分けて扱われるべきです。運転手は、輸送車の中の病気や外傷や歩行不能な豚を動かすのか、安楽死させるのか決めるための助けを呼ぶべきです。
病気や外傷や歩行不能な豚の移動
病気や外傷や歩行不能な豚の移動には道具が必要です。また安全の面から2人で行うべきです。担架、そり、台車、機械式輸送車があります(図参照)。歩行不能な豚を運ぶ道具、左から担架、そり、台車、機械式運搬車(米国NPBのTQAから引用)
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屠場到着時での死亡豚の対応
死亡豚を取り除くときの大切なことは、人の安全です。なお日本は輸送距離が少なく、死亡ロスも少ないので、その扱い方の詳細については省略します。
バイオセキュリティ
養豚生産に関わる人は全員が、病気の発生や拡散を防ぐための責任ある判断と行動が求められています。
そのビッグピクチャー
糞その他の排泄物など有機物での、輸送車や器具や作業衣や靴の汚染は、豚の輸送では普通のことです。これら有機物に病気の原因となる細菌やウイルスが含まれています。よいバイオセキュリティは、まずそれぞれの部署で責任を理解することから始めるべきです。農場での豚、人、車、物のすべての移動は、農場での病気の侵入のリスクがあります。油断や気にしない人は、病気伝搬の最大のリスクになります。以下の病気が、農場の経済的被害の大きいものです。
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豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)
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豚流行性下痢(PED)
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豚伝染性胃腸炎(TGE)
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豚デルタコロナウイルス
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サルモネラ
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大腸菌
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豚赤痢
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増殖性腸炎
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豚熱
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口蹄疫
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アフリカ豚熱
輸送でのバイオセキュリティ計画
病原体は簡単に車に乗ってくるので、豚を扱う人はクロス汚染に気をつけねばなりません。病原体はどんな物の上でも生き残ります。屠場内や豚生体市場を歩いたりすることは、靴や輸送車が汚染されるので、病原体の拡散リスクを高くします。豚を積んだり降ろしたりするすべての場所では、接触するものすべてがリスクと仮定すべきです。
輸送バイオセキュリティの目的は、輸送車や運転手や器具による病気拡散のリスクを最小限にすることです。これは輸送車や器具の清掃と水洗・石鹸による洗浄・乾燥・消毒・乾燥の手順の実行で可能です。以下がガイドラインです。
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豚を乗せる前に、その農場でのバイオセキュリティ上のダウン時間(農場にいなかった時間)規則を確認
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農場施設に入る前に、その場所での隔離線(Line of separation)を確認。隔離線は、農場スタッフがいる場所と輸送する人がいる場所の間の境界線と定義されています
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場所で用意されている長靴やツナギ作業衣や手袋でカバーして汚染リスクを最小限に。とくに境界線をまたぐときは、保護するカバーを使用
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使用済の使い捨ての保護カバーは決められた場所に捨てる、再使用する保護カバー材は、洗浄してから消毒する
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汚染から自分を守ること、自分の輸送車の病原体無しに対する責任を持つ
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屠場から出発する前に、運転席内からゴミ、虫、破片を取り除くことは、小さな不備を防ぎ、病原体の汚染を防ぐ重要なステップです
豚の糞尿などを取り去ることは、清掃と水洗・石鹸による洗浄・乾燥・消毒・乾燥プロセスの大切な第一歩です。輸送車と器具類に対しては、消毒薬は有機物が残っていない状態でのみ有効です。乾燥させることは、細菌やウイルスを殺し、消毒薬の力を最大限にするのに重要なステップです。例えば、豚流行性下痢(PED)と豚伝染性胃腸炎(TGE)のウイルスは、たとえ凍結した水の中でも生き残り、豚に感染します。それで輸送車の中の完全乾燥が重要なのです。
豚を乗せるときと降ろすときのバイオセキュリティ
病原体は有機物の中で、長期間生存できるので、確実な清掃と水洗・石鹸による洗浄・乾燥・消毒・乾燥のプロセスが病原体拡散のリスクを最小限にするために重要です。消毒薬使用前の確実な清掃と水洗は、病気予防の重要なステップです。輸送車と器具は、糞尿などは見た目に完全になくなっているようすべきです。違った種類の水性石鹸や洗浄剤が、確実に脂肪や有機物をなくすのに市販されています。複数の水性石鹸や洗浄剤を使う場合は、化学的に同時に使ってもいいかどうかも確認するべきです。豚を乗せる前に、輸送車は確実に清掃と水洗・石鹸による洗浄・乾燥・消毒そして完全乾燥を徹底的にするべきです。農場によって手順に違いがあるので、依頼主の水洗や消毒時間や乾燥時間など手順を確認すべきです。
確実な乾燥は病原体の不活化することを助けます。適切な時間での高い温度の熱は、多くの豚の病原体に効果的です。乾燥した後、すぐ車を使用しない時間、ダウン時間も必要です。ダウン時間は農場によって違います。
以下に輸送車の清掃・水洗・乾燥・消毒・乾燥の実例を示します。
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豚を輸送車に乗せる時のガイドライン
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決められた隔離線を、保護カバ衣ーなしで超えない。隔離線は、1頭目の豚をのせる前に、豚を扱う人も、輸送する人も知っておくべきです。もし隔離線がわからなければ、責任者に確認
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誰も知っていないなら、輸送車のバックドアと仮定しましょう
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もし豚が出荷肥育豚であるなら、豚を扱っている人は隔離線まで行ってもいいが、その先の輸送車までは入ってはいけません
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輸送する人は、隔離線の輸送車側から豚を扱うようにします。決して隔離線を越えないように
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もし豚を扱う人が手順を破って隔離線を越えた場合は、バイオセキュリティ手順のクリーン・消毒をはじめからやり直したのちに農場に入る
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豚を扱う人は、豚を載せ終わって出発したら即に出荷場所を清掃・水洗・消毒・乾燥する。その後バイオセキュリティ手順のクリーン・消毒をはじめからやり直すした後に農場側に入る
豚を輸送車から降ろす時のガイドライン
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豚を降ろす屠場や市場などの規則を知り理解しておく
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運転席内部への病原体汚染を防ぐために、保護カバー一式を入れるバッグを用意して、屠場内の土地に直接に靴で降りないようにする。
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屠場や市場内の歩行は最小限にし、歩くときは使い捨てブーツを着用してバイオセキュリティを維持する
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豚を輸送した人は輸送車の内部から屠場の隔離線外で豚を扱うこと
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決して他の輸送車の中に入らないこと
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豚の移動のための道具は、自前のものを使用する。借りたものを使用すると病原体をもらってしまうリスクがあり
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農場に病原体を持ち帰ることがないように、クリーンにできるまたは使い捨て道具(手袋、脛あて、帽子など)を使用
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豚を降ろし終わったあと、汚れたツナギ作業衣や長靴は、使い捨て用バッグに入れて一時保管
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靴や運転席内部マットの消毒
注意:輸送車の運転手は着るツナギ作業衣や長靴は屠場用のものを用意して、決して輸送車の内部や農場内で着てはなりません。
輸送に関わる緊急時の行動計画
交通事故への予防や起こった時の対処は、日本の交通教本と似ていますので省略します。交通教本に掲載されていないが重要なことは、もし豚の輸送中に事故を起こしてしまい、その責任ある人として、記者がインタビューに近づいてきた場合です。その時は、輸送していた人は、養豚産業界やその会社の最もわかりやすい代表者であることを意識すべきです。言動は大切です。消費者に見られているのです。以下は意識すべき数字です。
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米国では農業動物輸送での事故の59%が、真夜中から朝9時までに発生
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27%の動物輸送中の事故は豚輸送中
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内80%が出荷用肥育豚の輸送中
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内80%が1台での事故
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85%が運転者のエラー
動物福祉活動家と出会った時の対処法
乳や肉や卵の生産ために農業動物を飼育することに反対するグループがいます。米国のいくつかのグループは、農業動物の輸送に攻撃を絞っています。これは運転手、動物、農場にとっても危険です。以下ガイドラインです。
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知らせる。活動家を輸送ルートやパッカー周辺で見たら、すぐ農場のホットラインに連絡してください。
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対立することを避ける。活動家からの怒りや抗議を受けても、冷静に対応し、決して言い返さないこと。即、農場ホットラインに連絡する。セキュリティ要員か警察が対応すべきことです。もし身の危険や破壊活動の危険を感じたら、警察に電話してください。
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用心深く。身の安全第一です。車の行く手を活動家に阻まれたら、ゆっくりと停車してください。
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静かにする。相手はライブで放送しているか、ビデオで撮影していると思われます。冷静にして関わりを避けましょう。
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慎重に。屠場か車に近づくためのウソの口実を使ってくることが知られています。彼らは輸送車に乗り込むためにウソをつく場合、警察や行政や会社のものだという可能性があります。決して無関係の人に、輸送車のドアを開けたり、中に入ったりすることを許してはなりません。車の中を検分できる正式の証明書を要求しなさい。
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車を止める前に、周囲を観察し、危ない兆候があれば、車からおりずに、すぐその場を離れなさい。また落ち着いた様子で話しかけてきても、会話することなく離れなさい。少しでも会話すると相手はエスカレートします。
TQAの豚の行動編、豚の行動を知る
豚には恐れのゾーンがあります (図1)。それは眼には見えないが動物の周囲にある円形ゾーンで、飼育者と一定の距離を取ろうとする距離です。その大きさは、人との関係がいいと小さくなり、人を恐れていると大きくなります。そしてバランスの中心点(ポイント・オブ・バランス)があります。それは肩の付近にあり、それより前から人が近づくと豚はさがり、それより後ろから人が近づくと豚はさがるという点です。なお豚の真後ろは豚からは見えないので、豚は人がそこに入るのを嫌がります。
豚の感覚は視覚、聴覚、臭覚です。そして豚にはボディランゲージがあります。豚は恐れのレベルを、頭、眼、耳、声と身体の動きで示します。このボディランゲージは、豚が平静なときと恐れからの興奮しているとき変化します。この豚のボディランゲージをよく知ることが大切です。下の表に豚の「恐れ」に関するボディランゲージについてまとめました。
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豚の群行動と群としてのパターン
自分を守るために豚は他の豚と一緒にいようとします。そして豚が群になると一定の群の行動パターンができます。群の行動は恐れのレベルとスペースに関連しています。豚を扱う人は、豚がゆっくり動くフロー(流れ)をつくり、塊りや束になってしまうバンチング行動を避けるようにすべきです。
リーダーの豚に移動に十分な時間を与えれば、他の豚もそれに従います。しかし扱う人が、大きな音をたてたり、プレッシャーを与えたり、強引に移動させようとすると、豚はそれを避けようと動かなくなったり他の豚の上に乗ろうとします。豚群がゆっくり移動するフロー(流れ)行動は以下の時です。
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豚が興奮せず静かな状態
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豚は他の豚の移動に気を取られている
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豚の注意は移動することで群にいようとしている
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群れの先頭にいるが他の豚をリードし、他の豚もそれに従おうとする
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後ろからくる豚の移動で、さらに先頭の豚が進もうとする
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豚同士の間隔は空いていて接触してはいない
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人は一緒に移動しているが、豚の動きの流れ(フロー)を強制していない。豚は移動する時間とスペースを与えられている
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豚は安心していて人でなく他の豚の動きの流れ(フロー)に注意がいっている
豚群は目の前や横になにか動くものや気になるものがあると、動きの流れを止めます。騒音や強いプレッシャーや後方の豚の乱れも、動きの流れを止めます。大事なことは、動かそうとプレッシャーをかけるのは1人とすべきです。例えば1人の人が後ろからプレッシャーをかけている時に、他の人が前から、プレッシャーをかけると豚は止まり回転しようとします。豚を扱う人は、豚群の行動パターンを読み、豚の動きの流れ(フロー)を静かに動かし、十分なスペースを与えると問題が少なくなります。恐れのサインが強くなった時は、プレッシャーを少なくして、豚を落ち着かせるといいでしょう。豚群がフロー行動をできなくなる時の行動とパターンは以下の時です。
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歩く床の表面が違う(例、コンクリートから木製)
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足場の不安定や傾き(例、濡れていて滑りやすい出荷台)
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温度の変化(例、温かい豚舎内から寒い舎外へでた場合)
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光(例、明るい場所から暗い場所への移動)
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その他としては、他の人が前方や視界にいる時、風、影、強い光線、歩く先の障害物(例、飼料箱)、視界にないものからの突然の音や騒音、水たまり、反射するもの、色の違う器物、床の段差、ヒラヒラするもの、歩く廊下の広さの変化、他の動物です
豚は扱う人を見ています。普段から豚を扱っていない人や新規の観察者がいると豚は、豚の注意を引いてしまいます。少ない人数で動かすことが、豚にとってはいいのです。なお豚群の行動パターンは3つあります(表)。流れる(フロー)・旋回・集まり塊になるバンチングです。
バンチング(豚群の塊)
豚群としての流れが止まった時に、豚群が動かなくなって起こります。バンチングは豚にとって防御的な行動です。止まるだけでなく、動くことを始めることもしなくなります。止まったり、恐れたり、豚が密集した時に起こります。バンチングの初期のサインは、群密集し始めた時に、豚の頭や耳が上がります。豚は塊の群にいようとします。人からの強いプレシャーは逆効果になります。豚を移動させるのに、最も大切なことはバンチングを起こさないことです。一度バンチングが起きたら、プレッシャーを緩めることです。
豚を扱う人のバブルを意識する
人の周囲の見えない「バブル=泡」という距離、格闘技でいう間合いです。豚には恐れのゾーンがあり、人にはバブルという豚にとっての安心感のある距離感があるのです。なお狭い空間では豚は人のバブルの中にいます。
豚は人のバブルの弧にそって動く傾向があります。そして取り扱いが上手な人のバブルは、豚群を取り扱い、上手に移動させることもできます。バブルと豚の接点を見て、人は自分の位置を変えて、そのバブルで豚を動かすようにできます。密集した状態だと、後ろから動かそうとすると、小さい豚はバブルから逃げようとして、旋回したり盛ったりします。種豚や出荷肥育豚など大きな豚だと、バブルの中で固まります。大きな豚には、動かしたい方向を向いている豚から始めて、その他の豚をついていくようするといいでしょう。
豚の旋回
豚は人からのプレッシャーから逃れようとして、その人の周りをまわる習性があります。これは豚の防御的行動です。この習性と人のバブルを利用して、豚を移動させたり、体重別に分けたり、障害物をよけさせたり、バンチング行動(豚が集まって塊になる)も避けたりもできます。
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まとめ:豚を動かす時のベスト・プラクティス(最良の方法)
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移動を始めようとするときは、豚へのプレッシャーを最低限にする
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豚を静かにさせておく
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豚の注意を人ではなく、他の豚に向けさせる
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できる限り豚群として動くようにする
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人のバブルを利用して、豚群が塊になるバンチング行動を防ぎ、豚の移動の流れ(フロー)をつくる
豚の適切な扱い
意図的な虐待や無視は決して許されません。ここでは意図を持った虐待、豚と人の相互作用、道具とベスト・プラクティス(最良の方法)について述べます。意図を持った虐待または無視とは、普通に受容されている飼養管理からは外れたもので、意図的に苦痛や困難を与えるやり方と定義されています。以下実例です。
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電気棒を目や耳や鼻、肛門や外陰部にあてる行為。電気棒を多く使うことは虐待とみなされます。電気棒を哺乳中子豚や離乳時子豚に使用することは決して許されません。
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動物をきつく叩くこと。例えば拳骨で殴る、足で蹴る、固いもので叩き苦痛や出血や外傷を与えるもの
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出荷台や移動台など豚が移動している時などに、高いとこるから下に落ちるようにする行為
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動いている豚の上に手や機械で他の豚をのせる行為(動けない豚の移動は例外)
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生きている豚の耳や尾などの部分をもって引きずる行為。例外は自分では動けなくなった豚。そういう豚は移動用マットに載せて移動させるべき
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意図的に豚を高いところから落としたり投げたりする行為
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攻撃行動を減らすために、雄豚の鼻や牙などに身体的ダメージを与える行為(これに鼻輪や牙切は除く)
もし虐待や無視を目撃したら、すぐ責任者に通報すべきです。責任者はそういう行為を即止めさせ、どうするべきか話し合うべきです。農場は動物福祉上から、そういう行為についてどうするべきか、どう報告するべきなかの規則を決めておくべきです。豚の運搬する人や豚を扱う人は、そういう行為についてよく知っておく必要があります。米国では意図を持った虐待または無視したり、目撃したのに報告しなかった場合は雇用の停止または豚を扱う人だと動物施設に戻ることが禁止さらには刑罰の対象になります。
豚と人の相互関係(ふれあい)
豚と人間の関係の豚の行動に及ぼす影響について知っておくことは重要です。人の悪い意志は、豚に伝わるだけでなく、豚に人への恐れができ、豚を扱う人へのネガティブな反応になることがあります。反対に、普段から扱う人とポジティブな関係があると、豚により恐れが少なく、扱うのがより容易になります。日常から豚のいるペンをゆっくり歩くことは、人とのポジティブな関係に豚は慣れてきます。こうすることで、扱う人に対して豚は静かに起き、扱う人の指示で静かに動くようになります。豚は前の経験を覚えていて、過去に悪い扱いの経験があると、次に扱うのが難しくなります。この前の経験は人との相互関係に特に関係し、扱い時や移動時に使用された道具や器具にも関係しています。
豚を扱う人は静かに動き、突然の動きや大きな音など、豚を興奮させたり、驚かせるようなことはするべきでありません。豚を動かそうとするときに、叫んだり、他の扱う人と一緒に大きな音を出すこともよくありません。特に以下の攻撃的な扱いは絶対に避けるべきです。
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電気棒の過度な使用
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過度な大きい声や大きい音
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豚を早く動かすこと
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グループ当りの豚が多数で動かすこと
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廊下やシュートなどで、過密状態で豚を移動させる
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身体的に過度にコンタクトする
豚のサイズやタイプによる豚の扱い
種豚(母豚、若雌豚、雄豚)
種豚を動かす時はソート板を使用すべき。大動物は、突然に頭を動かし身体と柵やゲートで人を挟むことで、人の外傷の原因となります。特に雄豚は動きが予測できず危険です。常に注意を払い、決して雄豚に背を向けてはだめです。母豚は時に危険です。特に、哺乳子豚に処置したり離乳するときには危険です。普段から人と豚のポジティブな相互関係を作っておくことが大切です。
ペンやストールやクレートを出入する種豚の能力は、その個体で大きく違います。特に密になっている場所では、より大きな豚は動こうとしない傾向があります。豚を扱う人の問題は、豚に近すぎたりコンタクトし過ぎる場合があります。種豚を扱う場合は、スペースを与えること、できる限り群として動かす、さらに身体的コンタクトや騒音や他の人や活動を最小限にすることが大切です。
動物行動を利用しての豚の扱いテクニックの実例としては、妊娠豚1頭を分娩クレートに入れる時には、その妊娠豚は自分の歩こうとしているところのドアが閉まっているのが見える場合には抵抗します。その時は、クレートのドアを広く開け、豚が中に入ってからドアを閉めるようにする。クレートのドアを閉める人は、少し離れて立ち、動かずに待ち、豚にとって進もうとするところの障害物を思われないようにすることが大切です。豚の背後に立つ人は、豚にスペースを与え動きやすいようにします。
哺乳子豚
子豚は鋭い歯をもっているし、母豚も噛みついてくることがあります。哺乳子豚を持つときはあばらの下を、後肢の飛節を抱えるように持ち(図参照)、カートやペンや廊下に運びましょう。哺乳子豚を下に置くときは、まず子の足が下についてから離しましょう。子豚を投げたりするのはやめましょう。子豚を長い間抱えるときは両手を使いましょう。
離乳豚や肥育豚
豚の自然行動パターンを利用して動かしましょう。まず20分から30分間は、豚が落ちつくのを待ちましょう(上記の豚の行動も参考)。無理に動かそうとして耳などをひっぱってはいけません。
豚でいっぱいになっているペンから出す時は、まず扱う人の周りに豚を動かし、豚の後ろにつきゲートに向かわせます。そして扱う人はペンのサイドにつくことで、ゲートからの豚の流れを作ります。
ペンを完全に空にする時は、1人しかいない場合は、ペンのサイドにいて、豚を動かし続けゲートに豚が近づくように、自分のバブルで豚の流れを狭くする。最もいい位置は、人が楽な場所より、ゲートのもっと近くです。
2人以上の場合は、豚の後ろに回ろうとするよりは、ペンのサイドに付き、1人のみがプレッシャ―をかけるようにします。常に自分の位置とバブルを意識することが大切です。
子豚の適切な持ち方(米国NPBのPQAプラスから引用)

大きな肥育豚を扱う時はソート板を使いましょう。豚を止めたり、回したりするときは、押さえようと踏ん張るのでなく、豚に動くスペースを与え、自分の前にソート板を置き、豚がゆっくりしたり、止まったり回ったりするまで支えましょう。折りたためる2枚型の大きなパネル板も有用です。
豚が興奮したり攻撃的になったりしたときは、無理に抑えるのではなく、危険を避け場 所を開けたほうがよいでしょう。ペンの中で大きな豚を扱う時は、膝を少し曲げて立つほうがよいでしょう。そうすると前に構えたソート板が緩衝になります。強く押さえようとして立つと、豚が膝に、向かって突進してきたときに怪我をします。
ペンの中で個々の豚をソートする時
まずは近い場所にいる豚から始めて、選択した豚をできるだけ多く、自分の後ろに回す。人がペンの中にいる時は、豚のプレッシャーを放せるようにしておくといいでしょう。
一人でソートするなら、豚にスペースを与えて豚を落ち着かせて、ゲートを開けるまでは、囲いこもうとしないことが大切です。
二人でソートする時は、常に一人が動き豚を前に進め、もう一人はゲートのそばで静かにするか、またはゲートそばの人が豚を動かし他の人は静かにするといいでしょう。両方が同時に動くと、豚はゲートから遠ざかろうとします。
豚がペンからでたら、騒音やコンタクトを最小にしてスペースを与え、群の流れをスムーズにし、立ち止まらせたり、扱う人に向かってくることがないように。
移動させる時のタイプ 別グループサイズのガイドライン
施設デザインや環境によって違います。受けとる側の人にベストサイズを聞くのもいい方法です。
出荷肉豚での研究例によると、グループ当り8頭は4頭と比べると、トラックに載せる時間がかかり、食肉工場到着時の死亡豚が多かったと報告されています。1グループ5頭での移動は、心拍数が少ないとも報告されています。移動経路の中で一番少ないグループサイズを採用すべきです。条件によって5頭がベストまたは3頭がベストの場合あり。農場で条件を変えて試してみてベストを見つけるのもありです。
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豚の扱いの 適切な道具と器具(下図参照)
どの道具も豚タイプによって効果的な時とそうでない時があります。例えば、プラスチックのガラガラ音をだす道具は、離乳した子豚を離乳舎に移動させるのにはいいが、発情チェック後の雄豚をペンに戻すのには不適切です。またよくやる間違いは、道具を使う時に豚の恐れのゾーンを無視することです。もし豚扱い者が、手や道具で豚を触っているということは、恐れのゾーンの中に入っているので、動きを止めてしまう恐れがあります。豚の自然な行動を考えて使うことが大切です。豚を扱う人の最適な位置、そして豚へのプレッシャーを最小限にすることを考えるべきです。最低限かつ思慮深く道具を使用することが、よい結果を生みます。もし豚が動いていれば、あえて触らず動かすようにすべきです。あくまでも道具は、豚の自然な行動を促す補助です。
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動物の安全な扱い
養豚においては、人の外傷事故は豚の扱い時に最も起こります。出荷豚を扱う人は、豚を移動させている時に、豚との接触による外傷、滑る、倒れるなどでの外傷、トレーラーの中では頭傷、打撲、すり傷がよくあります。分娩舎や妊娠舎や若雌豚馴致舎では、豚を扱う人の切り傷、すり傷、転倒による外傷がよく起こります。水洗器の連結ホース、ヒートランプのコード、ヒーター、ペンのゲートなどでも豚を扱う人は手足の外傷を負います。なお人身事故は、農場に入って11か月以内の新しい従業員で起こりやすく、かつ45歳から64歳が最もリスクの高い年齢層です。
人の保護の道具例(図参照)
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ヘルメット:とくにトレーラーの内部で頭の外傷を受けやすい
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安全靴:スチールがつま先に入っている靴や特殊なデザインの安全靴、トレーラーで仕事をする人はは滑るのを防ぐ靴
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脛あてやひじあて
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耳栓と防塵マスク:長時間の騒音からの保護、ほこりからの保護
まとめ:豚の適切な扱いのためのベスト・プラクティス
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豚舎を豚の動きやすいようにする。例、ペン間の段差や邪魔なものをなくす
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毎日ペンの中を歩く
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施設にあった適切な豚の頭数のグループで移動させる
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豚を普通の歩くスピードで歩かせる
施設デザインと器具
光
明るい場所から暗い場所に変わる場所では、豚の動きが止まります。同様に強い影があったり、強い光線が目に入る場所では豚の動きが止まります。最近の出荷シュート台のデザインの研究では、柔らかくて連続した光を出すような光源(ロープ型照明)は、豚が影に驚くことは最小限にできます。
通路と出入口
通路の幅は92センチ(3フィート)あるべきです。この幅だと、3頭から5頭を1組で、120キロから130キロ(280ポンド)の出荷肉豚を移動させられます。2頭がそろって歩いて、渋滞しないのでストレスも少なく、移動のスピードも上げられます。出入口は通路の幅以上あるようすべきです。通路床との敷居は避けるべきです。
出荷用の傾斜ランプ(つなぎ場)やシュート台
ランプの傾斜角度は20度以下とすべきです。ランプ傾斜角度20度を超えると、後ずさりや豚が集団の塊になったりすることが多くなり、移動スピードが落ちます。ランプ傾斜角度10-13度だと、豚の移動は容易です。下記の傾斜ランプの公式計算が、0.34202未満であること。ランプ上昇の長さは直角三角形の斜辺で、傾斜ランプの高さは直角部分を下にした時の直角三角形の高さです。
傾斜ランプの高さ÷ランプの上昇の長さ<0.34202
例、ランプの高さが10メートルで長さが24メートルだと、10 m÷24 m=0.417で0.3402より大きいので、角度が強すぎるとなります。
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出荷台のデザインで注意すべきは以下です。
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コンクリートの床の場合は、階段状でスリップ防止表面にすべき。階段は、高さ・段差(蹴上げ)が6.35センチで、奥行き(踏板)25.4センチが推薦
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出荷肥育豚や成熟種豚では、滑り止めクリートは20センチごと、哺乳豚やナースリー豚では7.6センチごとが推薦
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トラックを出てランプに移動するときは、ランプの一番上は、平らな踊り場を設ける
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豚にとって90度の角度のある場所は、行き止まりと見て止まり回ろうとするので、ランプは90度の角度なしのストレートにすべき。もしストレートができなければ緩いカーブにすべき
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米国のトレーラーの入口の広さは92センチなので、それより少し狭いシュート幅で92センチから82センチにすべき
最近の研究ではよいデザインだと古いものに比較して、豚の動きが一定になること、さらに出荷豚の肉の質も改善されると報告されています。
豚の移動が良くなる因子は:
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出荷用シュートがカバー(アルミ等)されている
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クッションがあって、畜舎からシュートへのギャップがほとんどない
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コンクリート様に感じられる樹脂コートの床
なお施設や器具のメンテと修理は大切です。メンテと修理のチェックリストも用意すべき。
その他の参考資料:アイオワ州立大学、cfsph.iastate.edu
ミネソタ大学、cvm.umn.edu/sdec/
研究報告:輸送時の出荷肉豚ロス
米国で大掛かりな研究の結果が報告されました。輸送時の出荷肉豚ロスは、欧米では大きな福祉問題かつ経済的問題といわれてきました。出荷肉豚ロスには死亡豚と歩行不能豚があります。米国の大型屠場20か所で4年間(2012-2015年)での31000万頭の出荷豚での大掛かりな調査が行われました。
ロスは4種類:1)輸送トラックの中で死亡(DOA)、2)到着時に重症の外傷・歩行不能で安楽死(EOA)、3)係留ペンで死亡(DIP)、4)歩行不能(他の豚についていけない)です。1)から3)は死亡豚として集計され、4)は歩行不能豚として集計されました。なお、歩行不能豚は正規買取価格の3割引きとなります。
結果では4年平均で死亡豚0.22%、歩行不能豚は0.63%、合計で0.85%でした。死亡豚の内訳は、DOAが0.15%, EOAが0.05%、DIPが0.05%です。はっきりした季節性があり、死亡豚は7月 (0.29%)、8月 (0.32%)、9月 (0.30%)に高く、2月 (0.22%)、3月 (0.22%)、4月 (0.22%)で低い。歩行不能豚も季節があり、10月 (0.70%)、11月 (0.71%)、12月 (0.70%)に高く、4月 (0.57%)、5月 (0.53%)、6月 (0.54%)で低い。また屠場による差もあるようです。20屠場での上位25%と75%値は、死亡豚は0.15と0.38%、歩行不能豚は0.26%と1.11%でした。
経済評価では、米国では死亡豚と歩行不能豚として年間89億円のロスがあると推定され、1頭出荷豚当り89円のロスとされました。
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