top of page

ここでは食の安全・環境・コミュニティなど日本の産業界にとって有用な情報・知恵をもつモデル実例を取り上げます。
​実例1、米国大手性生産社クレメンス食品グループの取り組み
​実例2、米国中堅シュルツ農場の取り組み
実例3、米国大手クリスチャンセン農場の持続可能性レポート

クレメンス社の「環境への約束と責任」
 

 米国養豚界のリーダーであるクレメンス食品グループ(以下クレメンス社)の安全・環境・コミュニティへの取り組みについて取り上げます(経営セクション・経営実例も参照)。クレメンス社はファミリーファームでの生産・減または無薬・環境・福祉を配慮した高付加価値のポーク製品群を販売するというビジネスモデルで成功しています。養豚の生産から販売までを一貫し垂直に組み合わされた豚肉生産加工販売グループであり、3部門:カントリーファミリー農場群と食品工場と運搬部門からなっています。クレメンス社の概要は経営セクション・サブセクション実例に詳しく書いています。以下クレメンス社のHPからの記事要約です。

 クレメンス社の環境への取り組みは、連続した改善を目指す私たちの文化の重要な要素です。環境への取り組みで多くの感謝の言葉をもらってきてはいますが、その改善を止めることはありません。一貫した革新への態度は、持続性への志向と共に、クレメンス社を未来への基盤を造る養豚業界のリーダーとしています。そしてそれはよい結果をもたらしています。クレメンス社は大地、空気、水、資源の消費そして人々について配慮ことによって未来への基盤を造ろうとするようになりました。

水の保全 

  水の少なく使いかつ賢く使うことは大切です。農場でも食品工場でも、保全する方法を取り入れ、必要な水のみ使いかつできる限り水の再使用を実施しています。例えば2つの食品工場では、最新鋭の水処理施設を持ち、新鮮水の使用を減らし、リサイクル水を最大限使用しています。リサイクル水の使用量は全体の60%から98%です。さらに水処理で固形分を効率的に除去することで改善しています。 

  農場においてもできり限り節水してます。例えば、豚の飲水設備を節水ができるスイング型飲水器にすべて変更しました。これにより豚には必要な水を供給し、水浪費とそれによる汚染水も減らせます。結果として新鮮水の使用を43%減少させ、浪費水を含めた糞尿量が約50%減少できました。つまり大地への糞尿排出量が減り、運搬のための道路の使用も減り、運搬用燃料の使用も減らすことができています。 地球のクリーンな水を保全するという私たちの約束と責任は進行中です。システムを常に改善し、革新的なシステムを導入し、水の使用に責任をもって取り組んでいきます。

エネルギー使用とガス排出の削減

 化石燃料の代わりに天然ガスを燃やすことによって、クレメンス社は年間ガス排出量を300%減少させました。そして本社工場では、毎日の衛生洗浄用の温水のために、レンダリングででる熱を利用した新しい温湯システムを導入して、年間約2000キロリットルの化石燃料を減少させました。また養豚農場では新しいシステムにすることで、プロパンガスの冬使用を10-15%減少させました。また、本社工場の駐車場の照明をすべてLED照明に変えました。この変化で電気消費量を50%減らし、203,134 kWhを節約できました。さらに廊下やオフイス、荷物の積み下ろし場所やトイレの照明も動作センサーでオンオフができるようにしました。エネルギーの節約と効率化ができました。そして900万キロワット時間が節約できました。このように、この数年は、会社全体として小さな変化を積み重ねて、効率を上げて環境にやさしい会社を目指しています。

リサイクル活動

 リサイクル活動は環境保全の心臓部です。会社全体でグリーンプログラムを実施してます。すべての会社の活動でゴミを減らし、さらにゴミを埋立地に送るのでなく、温熱リサイクルと呼ばれる熱回収工場に送って、ゴミを電気に変えています。熱回収工場は会社全体から収集されたゴミを高温で焼却し水を沸騰させ電気に変えているのです。その電気は周辺コミュニティに送られます。焼却時にでるガスも大気汚染防止装置で大気の質に影響を与えないようになっています。さらに焼却灰もコンクリートやブロックに使用されています。

 さらに運送部門でも抗凍結剤やエンジンオイルの処理と再利用、バッテリーやブレーキドラムもリサイクルしています。

 

運送部門での活動

 クレメンス社は240台のトラックを保有しています。最新の方法で、使用燃料を減少させ、燃料効率を上げ、環境への影響を少なくしています。トラックエンジンのアイドリング時間を減らすためにAPUや補助ヒーターを搭載しています。これで年間136キロリットルの燃料が節約できました。さらに3分間アイドリングしたらエンジンが止まるようになっています。

 

肥育豚の生産者の環境活動

 飼料として地元で収穫したコーンを使い、水保全と空気保全プランをもっています。さらに多くの農場では風力発電と太陽光発電も利用しています。

クレメンス社の食の安全と品質への約束と責任

 

 1世紀以上のビジネスを経て、私たちはポークの安全性と品質は優れた製品を成功させるための基礎だということを知っています。それは私たちの会社とブランドの信頼の基盤だからです。

 顧客は、安全で高品質な製品を一貫して提供してくれていると私たちを信頼しています。そして私たちは常にこの信頼に答えたいと考えています。食品の安全性と品質は私たちへの期待であり、倫理、正直・一貫性、未来への基盤を作るという私たちの中核になる価値観に不可欠です。

 

 私たちの約束と責任は、厳格なポークの安全基準であるSQF認定から始まります。このSQF認定は自主的で独立的なプログラムで、私たちの製品の安全と品質の管理システムが、グローバルなスタンダードを満たすか、それを上回るように設定しています。このプログラムでは専任の食品安全/品質保証チームが、生産チームと協力して、当社の製品が品質高く安全であることを確認しています。

 

食品安全/品質保証チームの責任

  • 食品安全および規制コンプライアンス部門は、ハセップ(ハザード分析と重要管理点プログラム:HACCP)、食品安全保障プログラム、SQF認証を実施しています。そして第三者による外部査察をおこなっています。

  • 品質チームのメンバーは、品質スコアカードを使用して、品質を客観的に測定し、プロセスへの規則の準拠と手順を確認します。

  • 微生物分析スタッフは、食品の安全性と品質を維持するために、微生物学的および分析化学的ラボ検査で、施設、設備、原材料、および製品品を継続的に監視しています。

  • 衛生スタッフは、工場での廃棄が常に食品の安全性と品質のガイドラインへ準拠して行われていることを確認します。

 もし安全と品質が私たちの高い標準を満たしてていない、食品に妥協があると感じたと感じたら、どのチームメンバーも生産ラインや製品の出荷をストップできます。

消費者主導の製品群
 

 継続的改善モデルの一環として、私たちは今日と明日の消費者のライフスタイルに合った新製品の研究開発をしています。

より簡単に、より健康に、より満足して、そして風味に満ちた食生活を送れるように革新的な製品を造ることに挑戦しています。 クレメンス社は違った層で3つのブランドをもって、顧客のニーズに応じた製品を提供します。

私たち顧客と製品の約束と責任ために以下のことをしています。

  • 家族経営から生産される米国産ポーク使用

  • 米国ファミリーファームを維持します

  • 公正な賃金の支払いと働いている人の成長を目指します

  • 慈善寄付は私たちの優先事項です

ファミリー農場

安全で一性のある高品質の製品を提供することは、私たちにとっては妥協がありませんが、私たちを本当にユニークにしているのは、ソリューションを考えたサービスを顧客(大規模小売店・レストラン)に提供するよう努めていることです。顧客のニーズとビジネス成長のためのサポートができる能力があります。例えば当社の付加価値サービスとしてはポーク専門家の訓練、アイデアを生み出すセッション、工場と農場のツアー、トレンドと市場データを提供できます。

クレメンス社のコミュニティへの約束と責任

 

 創業の30年後の1895年以来、私たちは製品の寄付、ボランティア、および財政的貢献で地域社会を支援してきました。さらに毎年、私たちの会社の利益の10%を私たちが奉仕するコミュニティに寄付しています。さらに製品の寄付とチームメンバーの多くからのボランティア時間も寄付しています。それは集団としてのより良い未来への約束と責任の一部です。
 

 クレメンス社は過去5年間に周辺コミュニティの困っている家族への食事のために、フードバンクと同様な慈善事業団体に200トンの肉製品を寄付してきました。 私たちが住んでいて、私たちが使命と展望を強く信じているフードバンクへの寄付です。そのほかの寄付先は:米国赤十字社、米国ガン協会、米国白血病協会、米国多発性硬化症協会、救世軍、飢えを救う運動などです。
 

 会社からの寄付に加えて、チームメンバーが未来の基盤作りの機会に参加することを奨励しています。私たちのチームメンバーは定期的にボランティアをしています。イベントに参加したり、情熱を注いでいる非営利団体でのボランティア活動をしています。そして彼らがそうするとき、記録されたボランティア時間に基づく慈善団体を選び金銭的な寄付をしています。なお2019年での延ボランティア時間は1503時間で188日分です。製品は70トンで食事としは、62万人分です。
 クレメンス社は税引き前の利益の10%を慈善事業に寄付しています。

米国中堅生産者シュワルツ農場(Schwartz farms)のコミュニティへの取り組み

 

農場の概要は経営セクションにあります。

シュルツ農場は、授業員や契約農家、近隣住民、町民とコミュニティに対して恩義がります。そのサポートなしには、世界に食料は供給できません。大きなメリットがある職業です。それぞれの役割に感謝します。その感謝の印として、以下に寄付とサポートをおこなっています。

  • 4Hクラブ

  • 消防署

  • 学校のイベントや青少年スポーツプログラム

  • 教会慈善活動や市民慈善活動やサンタクロース活動

  • 食料配布や援助

クリスチャンセン農場の持続可能性レポート

 農場概要:1974年創業、本社米国ミネソタ州、従業員1000人、契約農場1500戸、3つの飼料工場を持ち、44農場で母豚143000頭を飼養し、離乳舎と肥育舎350農場を管理しています。2006年に養豚生産者所有の屠場をもつ食品会社Triumphの筆頭株主となりました。また年間360万頭の肥育豚を販売しています。

クリスチャンセン農場

会社使命と責任ある約束

 

 クリスチャンセン農場は、総合的でバランスのとれたシステムでビジネスを管理することを責任ある約束とし実行しています。それは倫理的に正しいことを適正に行うこと、連続した改善をし、人々、豚そして地球または私達の持続可能性や存続可能性への有害なインパクトを与えることを最小にすることです。

 クリスチャンセン農場の会社使命は、成長する世界へ食物を供給することです。そのために、責任を持って高品質のポーク生産をすることを、産業界のリーダーとして誇りを持って取り組んでいくことです。そしてクリスチャンセン農場の中核価値観は、「敬意」「正直・一貫性」「卓越性」「適応性」「革新」です。

 会社としての最重要事項としては、会社の成功と関係者の意識調査のマトリックスから「従業員の安全」「動物福祉」「食の安全」「抗生剤の適正使用」「従業員の能力育成」「水の品質・保全」「エネルギー使用」「気候変動」「ゴミ削減」です。

 従業員の能力育成のための人事制度として、「仕事上の達成計画とゴールの設定」「ポストは社内での内部昇格」「農場マネージャー研修」「リーダーシップと管理研修」「農場訓練生プログラム」「インターンシップ」「月ごとの安全トレーニング」などがあり、さらに「会社内アカデミー」での研修・研究活動もあります。

多様性と包括性のために

 女性と南米系従業員を積極的に雇用するプログラムを作っています。

 

ワーク・ライフバランスのために

 動物は毎日のケアが必要なため、ワーク・バランスを取るのが難しいので、仕事時間に柔軟性をもたせることで、この問題に取り組んでいます。

環境問題のスチュワードシップ(未来への投資)のために

 ゴミを減らし、環境フットプリントを最小にし、資源の使用効率を上げています。私達は産業界として環境スチュワードシップを進めることに賛成し、私達の農場でもっと持続可能性を改善する方法を常に探しています。

環境面での成果

  • 2017年から2021年までにポーク生産1キロ当りの使用した水の量を20.3%減らしました。そして2021年では、ポーク1キロ生産当りに使用した水の量は8.75リットルでした(1ガロン=3.785リットルで、1ポンドを0.424キロで換算)。この節約は約500 ccのペットボトルの約198万本で、約9400万リットルの水に相当します。

  • 化学肥料を農場からの糞尿で置き換えることで、約57000トンの炭素ガスを削減できました。これは米国1100万戸の暖房に相当します。

  • 2018年から2021年までにポーク生産キロ当りの使用した固形ゴミの量を2%、使用エネルギーの量を14%減少させました。

従業員の安全のために

 各チームとしても個人としても安全に働くことを心がけています。2019年から50人の安全指導員も設置しています。会社として安全に働くという意識・文化を形成しています。

従業員の安全面での成果

  • 従業員当り農場内でのケガによるロス日数は、7%減少しました。

 

安全な食品の生産のために

 米国ポーク生産者協議会(NPB)が作成したPQAプラスの認証プログラムに参加しています。このプログラムは、食の安全と動物福祉問題に最新の知識と科学をもたらし、常に改善されています。科学者と獣医師と畜産のエキスパートが知恵をだしあって作られています。

動物福祉のために

 農場とそこで働く人たちはすべてPQAプラスの認証プログラムに参加して、認証を受け毎年認証を更新しています。さらに豚の運送に関わる人はすべて、豚運送の品質保証プログラムTQA認証プログラムにも参加してます。動物福祉に関しては農場内部での訓練や評価に加えて第三者による査察も受けています。

抗生剤のスチュワードシップのために

 動物は時として病気になり、抗生剤が必要な時があります。米国政府で決められた休薬期間以上の日数をとるようにしています。

周囲コミュニティのために

 私達は農場とその従業員の力で、周辺コミュニティを強くすることを責任ある約束を実行しています。

 

周囲コミュニティへの寄付

  • 20201年の合計で2330万円(1ドル=100円換算)の寄付を行いました。内訳は、農業系の教育分野に1140万円、コミュニティへの寄付として596万円などです。農業系教育分野としては、ローカルの農業教育活動、4Hクラブ活動、高校教育や大学への寄付が含まれます。コミュニティへの寄付には、慈善団体へのポークの寄付が含まれます。

 

クリスチャンセン農場の周囲コミュニティへの経済的インパクト

  • 2021年には、クリスチャンセン農場は596億円のインパクトがありました。

  • 内訳としてコーンや大豆かすやアルコール蒸留粕の飼料原料で274億円を購入、給与115億円の支払い、契約農場への支払いが78.8億円、光熱水道費で16.6億円支払い、取引業者へ61億円へ支払い、修理メンテで9.6億円支払い、税金9億円の支払いです。さらに4億円分の糞尿を肥料として供給しています。

bottom of page